百済に装飾馬具なし
前項にてお伝えした『百済は墓に金で染めた馬具を副葬しなかった』
その数、『ゼロ』だと。
実はかすかにある。


これを持って、百済も装飾馬具を副葬する文化があったというのはなんというか、せこい。
そもそも上記の出土品も明確に百済が支配した領域だとは断定できないし。
日本人はすぐに『倭』と『百済』を密接な関係だと規定する。
なぜだろう?
なぜかは知っている。
しかし後世の『文字史料』がいくら喧伝しても、百済と倭の関係は、『新羅』と『倭』ほど親密性を持たない。
少なくとも「考古遺物の馬具」を見る限りは。
特に百済王に『馬具なし』の衝撃はもっと真面目に向かい合うべきだ。
不快だろうが、不愉快だろうが、不都合だろうが、それが事実なのだから。
武寧王陵
1971年、韓国の公州市のとある場所で百済王の墓が見つかった。
この古墳が考古学上、異例中の異例の大発見だったのにはわけがある。
衝撃だったのはこの墓の墓主、埋葬者が比定されたことにある。
同時代の新羅王陵、そして日本の大古墳の被葬者が常に推測、憶測で語られるのとは違い、この百済王は確実にその名がわかった。
王の名は斯麻。第25代百済王、『武寧王』その人である。
なぜ墓主の名前が判明したのか?
それは『墓誌』が発見されたからである。
『中国風墓誌』が。




中国文字、『漢字』で書かれた墓誌。
墓誌に書かれた『寧東大将軍』はまさに中国正統王朝、南朝、『梁』から送られた爵号になる。
中国風なのは墓誌だけではない。
その墓の構造もまた南朝を模倣したものになっている。







南朝『梁』の技術伝搬、技術提供があったのだろう。
墓は語る。雄弁に語る。
『百済』は、『百済』こそは『中華文明の正統伝達者』だと。
この武寧王こと、斯麻。
実は日本と深い関係を持っている。
彼、『日本書紀』よれば筑紫の各羅嶋という場所で生まれている。
現在の区分で言えば、佐賀県。
彼は佐賀県民でもあるのだ。生まれたとこを基準にすれば。
しかし『三国史記』ではまったく記載がない。
なぜだろう?
まずかったのかな、佐賀県民だったということが。
なぜ書いていないのかはよくわかりません。
彼が、日本と、『倭』と、関係があったことは墓の考古資料からも伺える。
棺桶の木材だとか、鏡とか、アクセサリーの一部とかに。
しかし彼は墓を『前方後円墳』にしてはいない。
あくまで『百済』は『中華』を指向した。
さて、この墓の衝撃は『墓誌』の発見に留まらない。
この墓、二つ目の大きな価値は『未盗掘』であり、完全に『未開封』であったことにある。
古墳は盗掘、盗掘者、いわゆる墓泥棒と切っても切り離せない関係にある。
日本の天皇陵も正式な発掘調査は禁止されているが、過去1500年の時間を考えると「墓泥棒」に入られていた可能性は高い。
つまり、正式な発掘調査が可能となっても、墓の内部は空っぽかもしれない。
そのことを考えると未盗掘、未開封の武寧王陵の考古資料として価値は格段に高い。
ゆえに、ここに疑問が発せられる。
百済王陵への疑問
武寧王陵には本来、というか、同時代を考えると『あるべき』、『あるはずである』ものが存在しない。
そう『馬具』が存在しないのである。
高句麗王、新羅王、倭王がそれぞれ金に輝く『馬具』を副葬しているにも関わらず、百済王『武寧王』の墓には『馬具が存在していない』のである。







あっ、わかった。
本当は副葬していたけど、盗まれたのだ。盗掘にあったのだ。
いや、未開封未盗掘なのだ。
あっ、わかった。
単純に入れ忘れたのだ。
王の墓だ。それはない。しっかりと墓の副葬品は吟味される。
そう、彼らは吟味した上で『馬具』を入れなかった。
『馬』のいない世界を構築した。
墓に。
墓には中国銭がある。中国風の土地を購入した証明書、買地券もある。
しかし『馬具』はいれなかった。
あの世に『馬』を求めなかった。
死後の世界も『馬』と共に、とは思わなかった。
安心してください、百済人のみなさん。
南朝、中華正統王朝、『東晋』、『宋』、『梁』、あとなんだっけ?
よくわからんけど、そのあたりからも『馬具』の副葬品は出土していない。
中国人はこう思った。
死後に『馬』は必要ない。
『馬』みたいな『畜』は、あるいは『武力装置』は必要ない、と。
あなたたちは、百済人たちは、『正しい』世界にいる。
ところで日本に、倭に、『馬』はどのようなルートで入ってきたのだろう?
ある人は言う、それは『百済』からだと。
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????????まじ?
歴史は大きな修正が必要だ。
歴史修正主義者?
あえてその汚名を被ろう。
『北方ユーラシア文明』、その核心は『馬』にある。
『倭』の歴史、そして『日本』の歴史、はたまた『日本誕生』はこの『馬』なしでは語れない。
『馬』を語ろう。
それは結局のところ『歴史』を語ることになるのだから。
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