黄金草原12 日本における角杯、そしてもう一つの『文明』

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日本における角杯

なぜ長々と角杯に述べてきたのか?
そう、日本にも角杯が出土するからに他ならない。

参照 湖を見つめた王
参照 湖を見つめた王
参照 湖を見つめた王
参照 土器と埴輪 須恵

さて角杯についてもう一度整理してみよう。

角杯に関係するものたちは、
スキタイ、ソグド、突厥、高句麗、新羅、そして日本なのだ。

一体それらに共通するものは『何』だろうか?
確実なのは「中国文明」以外の何か、ということだろう。

そろそろ認めようじゃないか、中国以外にも文明があったことを。

最初にスキタイに登場してから、日本の地に出現するまで、ゆうに1000年を超えている。
1000年を超えながらもそれを『文明』だと認めないのは、一体どういう理由があるのだろう?

えっ、角杯の出土は一時期だけで、しかも少数なので『日本』と何の関係もない?
そうではない。

この『角杯』、大型の有角獣が日本にいなかったため、その『形状』を変えた。

だが、その精神、意味、価値はまったくそのままに継続した。
そう、変容した形、それは『盃』だ。

『盃』による、杯による、義兄弟、擬制親子、擬制家族。

現在では『盃』による盟約はヤクザの世界、反社会的な世界のイメージとして捉える。
しかし、民俗学、歴史学が語るように、これらの儀式、儀礼はもっと普遍的な大衆性があったのだ。
一般の世界でもごく普通に行われていた。
『杯を重ねて擬制家族』になることを。

そして、多くの人はそれを日本固有、神話時代から、あるいは縄文弥生からと考えている。
もちろんその可能性もある。

しかし、それらを一つの完成された文化体系の一つだと捉える時、別の見方もできる。
これらはある時期、ある世界の文明を受け入れた時、一緒に『入って』きたのではないかと。

『北方ユーラシア文明』の一つとして。

北方ユーラシア文明

深く、長く、果てしない時を経て、完成に至った『北方ユーラシア文明』

それは『出自』が、『育ち』が根本的に『中華』と異なるため、彼らの言葉、文字、中国文字史料、すなわち『史書』の中では極めて、卑小、卑猥な存在として書かれている。

ユーラシアという広大な世界でたった一か国だけ『右衽』の国、『中華』。

なにゆえ、自ら『反対』の世界に生きながら、他者を侮蔑する世界を選んだのだろうか?

文明の進歩とは他者を隔離、疎外、そして廃絶することにあるのだろうか?
『左衽』の者たちは野蛮で、教養がなく、知性が劣るから仕方ない?
そうだろうか。

『万里の長城』

この宇宙から見える唯一の人工建造物であり、『人類文化遺産』と言われる『巨大な壁』。

『北』からの『夷狄』を防ぐために作られたとされる『壁』。
『塞外』と『塞内』を分け、『未熟、未達、未開』と『開明、進歩、文化』を区切り、そして何よりも『正解』と『不正解』を決めつけてしまう『壁』。

『中華』と『それ以外』を決めてしまう『壁』。

けっして『中華』は広大無辺な宇宙を包括する稀有な世界ではない。
むしろ『壁』で規定しなければならないほど、特殊で、変わった小さな世界なのだ。
ユーラシアを基準にすれば。あるいは惑星地球の規模で考えれば。

不思議と史書を読んでいると蛮族、夷狄が長城付近まで進軍してきたとき、なぜかこの『偉大な長城』はその「防御施設」としての効果を発揮しない。

「夷狄は長城に阻まれて帰っていきました」という記述はない。

普通に長城をスルーして「中国国内」に入っている。
おそらくガバガバだったのだろう。その構造上。

しかしそれでも『中華』は固執した。『長城』に。
自らを隔て、他者と区別するために。
自らを特別、至高だと認識するために。

実際的な効用よりも、精神世界の安全のために。
必要だったのだ、『壁』が。

ご存じだろうか?
この『万里の長城』、たった一度だけ作られなかった時代があることを。

それは『唐』の時代だ。
『唐』は世界帝国だから?
広大な東ユーラシアに君臨した覇権国家だから?

違う。
『唐』が中華の世界を超えてより広大な世界に影響を及ぼしたのは、その長い王朝のわずかな期間に過ぎない。
順風満帆な時もあった。だがそうでない時の方が長かったのだ。

突厥に、ウイグルに、契丹に、その他『夷狄』に何度も、苦しめられた。

しかし『彼ら』はついに『唐代』を通じて『一度も長城を建設しなかった』。

人を隔てる長城を。人の心を隔てる長城を。

この一点を見ても『唐』を『秦・漢』の再来とする伝統との歴代中華王朝史観に反対を述べたい。

『唐』が見た世界。
それは初めからそこにあったものでもない。誰かが事前に用意したものでもない。
たまたま、偶然、たどり着いた答えでもない。

全員で勝ち取った『勝利』なのだからだ。

『夷狄』も『華』も含めた全員でだ。

そしてそれこそが『日本誕生』に深く関わっている。

『日本』はこの人類が到達した史上最高の栄光の光をめいっぱいに浴びて生まれたのだから。

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