動物闘争文様





動物闘争文様。
強者が弱者を喰らう世界。
なぜか彼らはこの文様を愛した。
スキタイは愛した。
強者と弱者。
勝利と敗北。そして訪れる生と死。
厳しい。だが、あるがままの自然の摂理。
草原世界という動物と人が共に作り上げた世界において、極めて単純なルールが存在したのだろう。
生存のための勝利。
生きるためには強くあらねば。
弱さはごく単純に罪なのだと。
アルジャン2















ロシアの南で発見された、スキタイ文様の最古の金製品である。
その年代は驚くべきことに紀元前7世紀のものだとされる。
すでに彼らは完成されていた。
草原世界という文明を。
その黄金製品を見てもわかるように彼らは富者だ。
強者だ。
そしてかれらが富者であり、強者でありえた理由がある。


それは『馬』だ。
馬は力
彼らは墓に馬を埋めた。
死後の世界も馬と共に。
当然ながら死後の前、生前においても彼らは馬と共にあった。
馬の持つ強大な力、それは軍事力に他ならない。
後世、ギリシャの歴史家ヘロドトスがその著書『歴史』で述べるように『世界王者』アケメネス朝ペルシアに勝つことさえあったのだ。

『馬は来世でも富の象徴』
もちろん彼らが生きた現世においてもだ。
何度も言う『馬』を畜として扱ってはいけない。
『馬』は『聖なるもの』、『貴なるもの』なのだ。


世界四大文明がいずれも『農耕世界』に誕生したのは誰でも知っている。
彼らは「文字」を持ち、「先進的」「開明的」だと言われる。
ゆえに文字を持たない他者を未開だと言う。未熟だという。
文字を唯一の指標とする。
しかし、農耕世界にも、自称文明世界にもないものがある。
到達しえなかった境地がある。
それは『馬』だ。
馬は天与の地、神がみそめた幸運と幸福の地、『草原世界』にしか生まれなかった。
彼らは戦時においては他者を、馬がもたらす機動力、衝撃力、軍事力で圧倒した。
そして重要なことだが『平時においては彼らは馬の交易によって財を得ていた』。
富を得ていたのだ。
馬は農耕世界から見れば喉から手が出るほど欲しい「商品」なのだ。
当たり前だが、商品の流通、すなわち経済上、需要が大きく供給が小さいほど「価格は上がる」。
馬はとても高価な商品でもあるのだ。
持つものと、持たざるもの。
草原世界から見れば自称、他称文明世界はいずれも未達な世界なのだ。
『馬』に未達なのだ。
現代においては『馬』を動力としない。
よって『馬』を指標とすることはあり得ない。
だが歴史は違う。
『馬』を指標とすべきなのだ。
なぜなら歴史は常に『馬』と共に動いてきたのだ。
『馬』なしの歴史などあり得ないのだから。
コメント